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遮音設計－遮音構造、遮音量の計算
遮音構造
◆遮音構造の要点
１：床の遮音構造
床の遮音構造には弾性体の上にコンクリートを打つ湿式２重床、マンションなど
でよく使われる乾式２重床、木造住宅で使われる床材＋遮音マット＋床下地
＋階下天井 などの構造があり、この順で透過損失が低くなります。
下の階がある場合は床の遮音で不利となるのでなるべく最下階に部屋を作るよ
うにします。べた基礎や鉄筋コンクリート造りで部屋の部分だけ少し掘り下げると
天井高確保にもつながり好都合です。
浮き床構造にする場合は弾性体に高密度グラスウールやロックウールが使わ
れますが、クリープ現象（へたり）で床が下がってしまうこともあります。ゴムは
こうしたことがなく好都合です。ゴムを使う場合でも床下はグラスウールで吸音
します。また、浮き床は周囲とサウンドブリッジを作りやすいのでコンクリート
打設の際は確実な縁切りが出来るよう高密度グラスウールなどで周りを囲み
ます。
２：天井裏、床下の遮音構造
天井裏や床下は通常、他の部屋の床下や天井裏と繋がっており家全体に音が
漏れてしまいます。これを防ぐために部屋の遮音壁を天井裏や床下まで延ばし
ます。さらにグラスウールを敷込み吸音します。グラスウール敷込みで透過損失
が3～10dB向上します。電線などの引き込みはパテで埋め気密処理とします。
３：壁の遮音構造
間仕切り壁では室内側と隣室側に壁材が貼ってあり、それを間柱で繋いでいま
す。せっかく２重壁となっているのに、この間柱が２枚の壁を音響的に繋ぎ（サウ
ンドブリッジと言います）遮音性能を下げています。遮音壁とするためには間柱を
それぞれの壁面専用とします。さらに天井裏同様、壁間にグラスウールを詰めま
す。
４：ドアー
ドアーは遮音項構造上避けられない弱点です。グレモンハンドルとゴムパッキ
ンを使った鉄製防音扉でも35dB（500Hz）程度の遮音量しか取れません。この
解決策はドアーを２重にするしか手だてがありません。前室を設けられれば大き
な効果があります。前室に吸音チャンバを設置すると空調騒音からも逃れられま
す。前室の壁面には吸音材を貼り騒音を吸収させます。２重ドアーの設置では
サウンドブリッジが起こりやすいのでゴムパッキンなどで適切な縁切りをします。
５：窓
窓も遮音の弱点です。気密サッシでも30dB程度の遮音量なので２重窓にします。
できれば開閉機構のないFix窓とします。多重窓ではコインシデンス周波数が一
致しないようガラスの厚さを変え、窓と窓の距離をなるべく多く取ると共に周囲を
吸音します。ここでもサウンドブリッジが起こりやすいので取り付ける壁面や吸音
材の支持方法に注意します。また開口を騒音に有利な方向と位置に選び、なる
べく少ない窓面積とします。
６：空調騒音
密閉度の高い部屋では空調が必須です。湿気を嫌う音楽室では不使用時に除
湿器を運転します。除湿器を常時排水で使うとドレイン管が必要になりそこから
音が漏れますので面倒でも手で排水しましょう。
暖房は温水床暖房をコンクリート内に埋め込むと良いでしょう。コンクリートの熱
容量が大きいので床温度を20℃程度に押さえられ、ピアノも置けます。
クーラーと換気は共通の吸気口、排気口とし、消音器、吸音ダクトで送風騒音を
下げます。吸音ダクトや吸音チャンバの透過損失は低いので騒音の低い場所に
設置します。消音器は２カ所以上に分散して配置すると送風騒音を低くできます。
少なくとも１基は遮音壁に密着させ、さらに送風機近くに１基を設置します。また、
ダクトや給排気口の断面積を大きく取り風速を下げます。20畳程度の部屋では
直径150mmのダクトを使い、毎時200立方メートルの風量が目安です。
消音器はエルボ型の場合１つで15dB程度の減衰が得られますが低い周波数で
はほとんど減衰しません。減衰の下限周波数は断面積で決まり、100平方センチ
メートルで400Hz、400平方センチメートルで200Hz程度です。
７：遮音構造例
下図は半地下構造での遮音概念図です。鉄筋コンクリート（RC躯体）の熱容量
を冷暖房に有効に使うため基礎断熱と外貼り断熱を施し温水床暖房としていま
す。半地下とする事で夏は大気温より低く冬は大気温より高い地熱も活用してい
ます。遮音のためのグラスウールや室内音響を調整するグラスウールは保温性
が良く適切な除湿により快適な空間となります。
